医者の道を歩むべき人間に必要なのは何?
ここ最近、東京医大の入試不正問題が世間を賑わせている。
特定の受験生に対して加点したり、女性の受験生には性別を理由に減点していたりしたとのことだ。
この問題は様々なことを教えてくれる。
まず、裏口入学なるものがまかり通っているという点。
大学受験や浪人を経験した身からするとひどく恐ろしい事実だと思う。
大学の合否というのはご存知の通り、テストの点数で決まる(ことになっている。)
テストの点数分布というのは、うまく作られたテストであるほど正規分布、つまりベルカーブを描く。
偏差値50を頂点に左右対称の山を描くグラフのことだ。
点数が高くなるにつれて人数が減っていくし、点数の低くなるにつれても人数が減っていく。
大学入試を作る側からすると、特定の問題だけやたら強い受験生やヤマ張ってきた受験生が沢山入ってこないようにしなければならないため、結果として正規分布に近いグラフを目指すことになる。
逆に質の悪いテスト、簡単過ぎたり難し過ぎたりするテストは頂点が右や左にずれる。
もっと酷いとフタコブラクダのように山が二つあるグラフとなるのだ。
ただ、テストは広い範囲の学習内容に対して数問で学力レベルを問わなければならないので、当たり前だがそう簡単には正規分布に近づかないことに注意しよう。
さて、ここでは受験生全体の結果が正規分布を描いていたとする。
この前提で、もし定員に対して受験生の割合が2倍だとすると、ちょうど真ん中の偏差値50以上の受験生が受かることになる。
ネットで簡単に調べた結果によると、東京医大医学部は171人の合格者に対して約2600人の受験生がいて倍率は約15倍のようだ。
《大学受験パスナビ》
https://passnavi.evidus.com/search_univ/2720/bairitsu.html?nendo=2018
つまり東京医大の場合は上位6〜7パーセントの受験生が受かるのだ。
分布でいうと、右のわずかな部分となると思われる。
僕は工学部出身で、倍率は2.3倍程度だったと記憶している。
2.3倍というと、平均点より少し高ければ受かるレベル、入試の難易度にもよるが、得点率が60パーセントあれば十分受かる程度と思う。
しかし、倍率15倍となると得点率が80〜90パーセントは必要なのではないだろうか。
しかも入試の作り手は正規分布を目指すので、受験生のレベルが高いほど難易度を上げてくる。
有名医大の医学部ともなれば量、質ともにずば抜けたものを要求されてもおかしくないだろう。
(東京医大医学部の受験問題を見たことがないので後で調べてみようと思う。)
東京医大医学部に受かるためには、高難度の入試でトップレベルの成績を修めなければならないことを改めて確認した。
今回の問題である不正入試に戻ってみると、報道では点数を操作して息のかかった受験生を受からせたり、女性受験生を不合格にしていたとのこと。
当たり前だが、受からせたい人が合格ラインにいれば加点の必要はなく、受からせたくない人が合格ラインにいなければ減点の必要はないのだ。
よって、合格レベルの学力がないものを合格させ、合格レベルの学力があるものを不合格させていたということになる。
日本では大学の医学部医学科に入り、国家試験を通り、修行を積むことで医者になれる。
逆に言えば医学部医学科に入らなければ医者になるための資格を得ることができない。
大学受験そのものが医者になるためのゲートの一つに設定されていることになり、高校までの学力レベルが医者になるための素質を試されていると言えると僕は思う。
大学によって難易度に差があったり、地域枠、帰国子女枠や特別入試なんてものがあるからバラツキは存在して仕方ないが、一般入試で学力勝負に出た受験生に対しては学力で医者になれるかどうかを問うていることになる。
東京医大のケースでは学力で医者になるか足るものを審査するはずが、学力とは関係ないところで審査が実施していたのだ。
また、この手の不正が突発的に発生したもの、東京医大だけで行われているものと考えられるだろうか?
感覚的に言えば、習慣的に行われてきたであろうし、他の大学でも行われているだろう。
そうなると、これまで数多くの学力の足りていない人間が医者となって、学力のある人間が医者への道を断たれたことになる。
とても残念な話だ。
僕は感覚的に長期的かつ広域的な問題だと思っているが、このことに何も証拠はないので是非とも国による全国的な調査を期待する。
さて、一方で学力で医者になれるかどうかを判断していいのかという部分に疑問が出てくる。
これまである程度の人間が不正に大学入試を突破して医者になったとする。
そして、その人たちが立派に医者を務めているとするのなら、学力で足切りする意味は思っているほどないことになる。
ある程度の学力があって、他の何かしらの要因があれば医者としてやっていけるのなら足切りの方法を考え直す必要があるのではないだろうか?
例えば、報道では寄付金を期待して不正にいたったとあった。
寄付金を保証できる、つまりお金持ちを大学は入学させたかったのだ。
医者になるために、学力がゲートになっていると先程は書いたが、学力以外にも国家試験や研修医としての修行も医者になるために必要な条件なのだ。
あくまで大学は医学を学ぶ場所であると認識すれば、入学の条件をテストの点数に絞る必要はないだろう。
医学部で医者になるための知識やスキルを身につけていない人間は国家試験で弾かれるべきなのだから。
つまり、そこそこの学力があるなら、多額の寄付を条件に入学を認める制度を正式に設定すれば良いのだ。
不正入試は学力を試す場であったのに、学力以外の部分で合否判定を下していたのが問題だったわけで、最初から寄付金を条件にしておけばルール違反でもなんでもないので全く問題にならない。
今まで、ある程度の人間が裏口入学で医者になっていたことを考えれば、正式に寄付金入学制度を設けても実情との乖離がなくなるだけで医師としての質に何も変化は与えないはずなのだ。
僕の考えをザックリまとめると、以下のとおり。
国は全国的に不正の調査を行なって公表すべき。問題か東京医大だけとは誰も思っていない。
私大医学部には、多額の寄付による入学制度を認めてあげるべき。大学は勉強、研究をする場で、医者になれるかどうかは国家試験で厳しく審査すれば問題ない。
実際のところ、高校までの学力と医者としての実力にどれくらい関係があるのだろう。
この辺も誰か調べてみてほしいと思う。